株式会社 暮匠

家づくりコラム 2024.05.30

能登半島地震から学ぶこと②

こんにちは、暮匠です。

シリーズでお届けしている能登・輪島の視察レポート。
今回は第2弾「基礎」についてお届けしていきます。

まずは、令和6年能登半島地震で被災されたみなさまに
心よりお見舞い申し上げます。
そして、一日も早い復興をお祈り申し上げます。

能登半島地震によって大きな被害を受けた輪島。
建物は、地震当日の爪痕を大きく残した状態で残っていました。

ニュースにもなっていた大きなビルは、
基礎ごとひっくり返り、地中に沈み込んだかのような姿に。

ビルの底が露わになっている前で、
どれだけの力が加われば、
こんな大きなビルが基礎の鉄柱までちぎれてひっくり返るのか?
もう言葉が出ませんでした。

住宅に目を向けてみると、
さらに大きな衝撃を受けました。

なんと、多くの住宅が
基礎から家がすべり落ちている」状態だったからです。

こうなってしまった大きな原因は、
家本体が、
基礎の上にただ乗っていただけ」だからです。

家族を守るはずの家が、
まるで子どもが遊ぶ積み木の家と同じ状態とは、
とても信じられませんでした。

本来は、写真のように基礎コンクリートの中に
基礎と土台を連結するアンカーボルトがなければいけません

しかし、輪島で見た家の多くにアンカーボルトがなく、
ただ基礎の上にポンと家が乗っている”状態。

こんなことがあるのか…と目を疑うほど
大変なショックを受けました。

もうひとつ基礎の弱さを実感したのが、
倒壊した家の基礎のほとんどが無筋であったこと

強度のために入っているはずの鉄筋が
入っていなかったのです。

暮匠では、
・基礎には鉄筋を入れる
・基礎と土台をアンカーボルトでしっかり連結する
という基礎づくりを当たり前に行っていますが、
そうとは限らない現実を知りました。

さらには、土台が腐りかけている(ほぼ腐っている?)家も。
ただでさえ脆弱な家なのに、
土台が腐っていては
大きな地震がきたらひとたまりもありません。

この木材の腐朽(ふきゅう)も、
家屋倒壊の原因のひとつといっていいでしょう。

腐朽した材木は、
土台や柱だけではなく、家全体に広がっていました。

ここで気を付けたいのが、
木材の腐朽を古い家だからという理由で片づけてはいけないということです。

新しい家に住んでいても、
家の性能や住み方によって腐朽することがあります。

腐朽の原因は、2つあります。
1.木を腐らせる「腐朽菌」
2.シロアリなどの害虫

この2つの原因を回避するためには、
腐朽菌を繁殖させないための住宅性能と
シロアリ対策が必要になります。

腐朽菌における具体的な対策としては、
断熱・気密性能を高めて「壁内結露を防ぐ」ことが有効です。

腐朽菌が繁殖する4つの条件、
・30~45度の環境(特に30度前後が発育に最適)
・湿度が高い場所(湿度85%以上、木材の含水率25%以上で発生しやすい)
・空気(酸素)
・栄養分(木材に含まれるリグニン、セルロースなど)
のうち、
私たちが家づくりで対策できるのが、温度と湿度

壁内結露は、外と室内の空気が出入りする際、
外気と室内の気温差によって
水蒸気を含んだ空気が壁の中で発生することで起こります。

それを防ぐために、まず大事なのが
断熱・気密性能を高めることです。

家を造る大事な構造材を守るためにも、
壁内結露を起こさせないことがどれだけ大事か
倒壊した家屋を見て、改めて考えさせられました。

視察の途中、スタッフのひとりがポツリと一言。
「完成したら見えませんからね。」

完成したら見えないからと言って
このようなずさんな建築でいいものだろうか。

内装へのこだわりよりも、
住宅の性能にこだわる家づくりがどれだけ大事であるかを、
これから家を建てる方に正しく伝え、
分かってもらう努力をしていかなければいけないと
強く心に誓いました。

次回は、大きな地震に耐えうるための
耐震金具」についてお伝えしたいと思います。